玉姫物語り*プロローグ*
これは、太陽神と月の女神との間に産まれた姫が、両親からたくさんのことを学びながら、人間界で様々なことを体験し、生きる意味を知っていく愛の物語りです。
第0話「生まれる」
それは、あるひっそりとした山奥の…
美しい鳥の声や、川のせせらぎの音が聴こえ、野花が咲き誇る場所
太陽神と月の女神が、自ら地球に降り立ち、容姿を人間の姿に変えて、ひっそりと暮らしていた。
これから始まろうとしている、あることを行うために…
*
まだ森の仲間たちが目を覚ます前の、朝霧のかかる静かなある春の日
夜明けとともに、その子は産まれた…
その名は、"玉姫"
太陽神と月の女神との間に産まれた子。
暗闇の中で、月のように優しくも強く光を灯す愛の玉が、太陽のように明るく輝く光を帯びてこの世を照らす…
どのような存在であろうと愛することのできる、優しさと強さを兼ね備えた子。
その無条件の愛は、この世を救う光となるだろう…
太陽神の父の見守る中、月の女神である母親の腕に抱かれ、幸せそうに眠る我が子を愛でながら、両親は誓う…
「人間界での名は、舞依(まい)としよう。この子を地球を護る女神として育てよう」と…
*
『舞依』の名前の由来
”舞”
この世に愛の花を咲かせる。
春の日に美しく咲き誇る花のように、この世の全ての生きとし生けるものたちが、愛と調和、美しく重なり合うハーモニーを奏でながらこの世界に拡がる…という願いを込めて。
“依”
人や神様、自然など、あらゆるものに頼り頼られ、その豊かさを忘れることなく。また、自然のまま、ありのままの姿で生きられるようにとの願いを込めて。
*
産まれた時からそばにあるもの
鳥や動物たち、昆虫など
壮大な命の輝きを放つ大きな木々や、美しい草花たち…
そんな森の仲間たちと共に、人間の目には見えない天使や妖精たちとの触れ合いも行われる中で
両親からの愛情を受け、玉姫はすくすと育ち、もうすぐ7歳の誕生日を迎える。
地球を護るものとしての使命のある子であるため、なるべく人間の目には触れないように大切に育てられ、「人間とは関わってはいけない」と両親から厳しく伝えられていた玉姫だったが…
ある歳なったら、この子に使命を伝え、人間の世界へ旅立たせなければならないことは決まっていた。
それまでは、神聖な存在として大切に守りながら育てることを、両親は決めていたのだ。
しかし玉姫は、なぜ人間と触れ合ってはいけないのか、どうしてダメなのか、理由を聞いても教えてはもらえずどうにも納得ができなかったため、自分の目で確かめに行こうと、両親の目をかいくぐり、動物たちの助けを借りてひとりで山の麓まで降りていった。
山の麓にたどり着いた玉姫は、そこで同じくらいの歳の人間の男の子と出逢い、よく遊ぶようになった。
遊んでいると楽しくて、玉姫の目には、人間がそんなに危険なものだとは思えなかった。
しかし、両親に人間と触れ合うことを禁止されていたため、このことは内緒にしていた。
初めて人間のお友達ができたことが嬉しかった玉姫は、毎日のように遊んでは、泥だらけになって帰ってきていた。
両親も、最初は森の動物たちと遊んでいるのだろうとあまり気にとめてはいなかったが、ある日、玉姫が持ち帰ってきたものを見て、不審に思う。
その手に握られていたものは、小さな飴玉だった。
その飴玉を隠しながら部屋に戻る玉姫の様子を不審に思った両親は、次の日、いつものように遊びにいく玉姫の後をつけていった。
そして、いつもの場所に辿り着き、いつものように人間の男の子と遊ぶ玉姫を目にした両親は、驚きを隠せなかった。
すぐさま動物を使って人間の男の子を追い払い、玉姫を連れて帰った。
*
父「玉姫。人間と触れ合ってはいけないといつもいっていただろう。なぜ約束を守らなかったんだい?」
玉姫「ごめんなさい…。でもね、わたし、どうして人間と遊んじゃいけないのかわからなかったの。だから、自分の目でみてみたかったの…」
父「そうか…。だが玉姫、もうあそこへは行ってはいけない。お前は太陽神の私と月の女神である母親から産まれた、地球を護る使命のある大切な子なのだから」
玉姫「地球をまもる?」
父「そうだよ。これからお前は、この汚れた地球を、美しく調和の取れた愛の星にするのだよ」
玉姫「愛のほし…?地球はよごれているの?」
玉姫のその問いに対し、父は少し悲しそうな表情でこう答えた。
「残念なことに、人間の手によってこの地球は様々なもので汚染されている。私たちと同じように美しかったはずの魂も、汚染とともに曇ってしまった。なのでもう一度、その神聖な魂を甦らせ、この地球を綺麗にして美しく素晴らしい愛の星に戻すのだよ」
玉姫「そっか…。それをわたしがやるのね。お父さん、お母さん」
母「そうよ、玉姫。あなたはもうすぐ7歳になる。そうしたら、人間の世界に旅立つのよ」
玉姫「え?!人間のせかいにいけるの?」
母「そうよ。冬が終わって春が来たら…ね」
玉姫は嬉しくて嬉しくて、思わず飛び跳ねてしまいました。
(人間のせかいにいける。どんなせかいだろう…。お父さんたちはあまりよくないって言うけど、きっとすてきなところのはず…)
玉姫は、まだ見ぬ人間の世界にワクワクし、これから待ち受けるであろう楽しい生活に胸を躍らせていた。
父は、そんな玉姫の様子を見て心配になる母の肩を抱き、こう呟いた。
「あの子は純粋だが、賢く聡明な子だ。きっと大丈夫だよ。信じよう…」
「ええ、そうね…。信じましょう」
そんな両親の想いとは裏腹に、喜びに溢れる玉姫。
これから玉姫の想像を超えた、あらゆる試練が待ち受けているなどどは知らずに。。。
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